「沖縄大衆カルチャー酒場 小梅」は国際通りの端に位置する安里にまもなくオープンする予定、その場所は国際通りの中でも少し異質の感がある地域、建物だとは前回伝えた。今回は「小梅」が入る建物がどういう経緯で現在のように成り立ったのかを伝えようと思う
この建物(元儀間本店の倉庫)の中にある五軒の飲食店を経営していた人物、「昇 久光」さんを訪ねた。昇さんは沖縄が本土復帰した1972年に、飲食店の第一号店を立ち上げ、その後次から次と形態の違う飲食店を展開した。まさに飲食界の申し子といってもいいぐらい、当時の沖縄の飲食界に多大な影響を与えた人だ。今から35年前頃のある日、いつものように昇さんは次の物件を探していた。そんな時に偶然に知り合ったのが、儀間本店(現ジーマ)の創業者(当時は会長)だった。当時、安里にあった儀間本店の倉庫は他に移り空き家になっていたが、愛着のあまりに潰せずにいた。が、あまりの老朽化とシロアリの巣窟にもなり、その対応に苦慮していたという。会長は、どうにかならないものかと昇さんに相談してみた。
相談を持ちかけられた昇さんは、それまで数件の飲食店を成功させていたノウハウを存分に活かし、いくつかのアイデアを儀間本店の会長に提案した。さすがに決断の早い会長はすぐに手をつけた。木造の建物は残しながら中は鉄骨で補強、赤瓦も葺き替え、シロアリも完璧に駆除した、その後昇さんの提案を受け、最初は3店舗「安里屋」「バーボンクラブ」「モアクラブ」(カラオケバー)を作り、その後「うの花」「アリス」(当時は別名)を加え、見事なまでのリニューアルを果たした。そして、全ての運営を昇さんに任せた。
しかし、安里界隈は国際通りに比べ人の通りは少なく、なんとなく暗いイメージは否めない。大胆な変化を遂げた倉庫だが、一抹の不安は感じたのではと思われた。が、昇さんの先見性は半端ではなかった。
この建物のすぐそばに1975年にできた「西武オリオンホテル」(現ホテルロイヤルオリオン)があった。沖縄ブームにのったこのホテルは連日観光客で満室。昇さんの各店舗もその波に乗り観光客だけではなく、ホテルのスタッフも加わり連日大にぎわいになったそうだ、特に「安里屋」は当時では珍しい琉球料理がメインの居酒屋として観光客に喜ばれ、「バーボンクラブ」は沖縄らしいオーセンテイックなバー、そしてその隣の「モアクラブ」がカラオケバーとなれば、観光客はこの場で完了する。見事な囲い込みをやってのけた。
あれから約35年がたった。この5店舗は「安里屋」「アリス」は現存、「うの花」は現在「焼き鳥の鳥拓」となり人気を博している。そして、カラオケバー「モアクラブ」がいくつかの店舗に変わった後「沖縄大衆カルチャー酒場 小梅」になる。惜しむらくは、沖縄を代表するオーセンテイックバー「バーボンクラブ」が今年5月に閉じることになった。多くの名バーテンダーを輩出し、あの超ロングなカウンターでは多くのストーリーが生まれたであろうと想像すると残念でならないが、オーナーの昇さんはこの内装を残す条件で次へ託すといわれた。ぜひお願いしたい。
さて、「小梅」のオープンだが・・・本日2021年5月23日、連日続くコロナの感染悪化(昨日は231名の最多)で緊急事態宣言が(来月6月20日まで)出された。出鼻をくじかれた感じだがスタッフは見たところ意気揚々だ、毎日、オープンまでの準備に余念がない。コロナ禍が過ぎた頃、この場所にどんな新しいカルチャーが生まれるのか今から楽しみだ
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